若手リーダーが育たない!真の課題は何か?
「若手リーダーが育たない」「中間管理職が育たない」
組織づくりコンサルタントという仕事柄、こんな悩みを相談される。
昭和生まれの上司は、若手をこんな風に見ているようだ。
・ 失敗を恐れて、言われたこと以外やらない、受け身。
・ 怒られることが苦手で、自分を守ることが最優先。
・ 競争意識が低く、欲がない。出世にも興味がない。
一方、若手の部下は、昭和生まれの上司をこんな風に見ているようだ。
・ 努力と根性で解決しようと思っているのではと感じる場面がある。
・ 新しいことに挑戦しろと言うけれど、失敗したら怒られる。何もしない方がまし。
・ 上司を見ていても、自分の未来に希望が持てない。
上司から見えている世界と部下から見えている世界は、まるで違う。 なぜ、若手リーダーが育たないのか?真の課題は何なのか?
「世代間ギャップ」から考察してみよう!
上司と部下の世代間ギャップに苦しんでいる人は少なくないだろう。
我々の価値観形成には、青年期の経済環境が大きく影響しているといわれている。
上司はJapan as No.1(バブル)の環境で育ったX世代(1965~80年生まれ)。部下は、失われた20年(バブル崩壊)の環境で育ったミレニアル世代。
X世代の上司は、頑張った先に出世や経済的な成功がある先輩の背中を見てきた。ミレニアル世代は、頑張っても横ばいで衰退への不安を抱えている先輩の背中を見ている。
学校での教育もまるで異なる。
X世代は、「集団に準拠した評価」(いわゆる「相対評価」)のもとで育った。学年や学級などの集団においてどのような位置にあるか、常に競争に晒された。運動会でも一部の学生がリレーの選手として選抜された。選ばれる自分になることが成功を手にすることで、親の期待に応えることでもあった。
ミレニアル世代は個々に応じた指導を行う「ゆとり教育」、「目標に準拠した評価」(いわゆる「絶対評価」)のもとで育った。定められた基準に到達したものは順位に関係なく「5」と評価された。運動会では、徒競走や棒倒しがなくなり、勝負や順位をつけないゲームが増えた。競争することよりも「自分自身の人生や生き方」を大切にする価値観が育まれた。
リーダーシップ観も、X世代とミレニアル世代ではまるで異なる。
X世代は「自ら方向(目標)を決め、責任を持ってひっぱること」をイメージするが、ミレニアル世代は、「周りをよく見て、指示を出しまとめること」をイメージする。
(日本能率協会マネジメントセンター調査より)
「えっ、嘘でしょう?」と疑ったX世代の私は、20代・30代の研修受講生20名に2枚の絵を見せて問いかけた。
「あなたがイメージするリーダーシップはどちらですか?」
上の絵は、紙飛行機がデルタ形(三角形)のフォーメーションで飛んでいる姿が描かれている。2枚は、リーダーを示す赤色、メンバーを示す白色の紙飛行機の位置が異なっていた。
1枚目は、自ら方向(目標)を決め、責任を持ってひっぱっているイメージの「先頭」が赤色。2枚目は、周りをよく見て、指示を出しまとめているイメージの「後方中央」が赤色のものだった。
すると30代の最年長の受講生1人が「先頭がリーダー」と答え、残りの19人の受講者は「後方中央がリーダー」と答えた。
リーダーシップの定義がそもそも違うという事実を目の当たりにして、愕然とした。上司が「リーダーシップを発揮しよう!」と伝えても、そもそもイメージしている「リーダーシップ」が異なっていたのだ。若手部下も「リーダーシップを発揮しているのに…… 」と違和感を感じてきたのだろう。
このギャップを知り、こんな疑問が湧いてきた。
「今の時代に合っているのは、どちらのリーダーシップスタイルなのだろうか?」
今の時代に求められる組織とは?リーダーシップとは?
「VUCA」な時代と言われている。
「VUCA」とは、《volatility(変動性)、uncertainty(不確実性)、complexity(複雑性)、ambiguity(曖昧性)の頭文字から。》変化が激しく複雑で、将来の予測が困難となった社会を表す言葉だ。
新型コロナウィルスのパンデミックで、私たちの生活は一変した。この2年、未来の予測が立たず「何が正解かわからない」という大きな不安を抱えながら生活している。以前から、技術革新やサービス開発などで私たちの生活は大きく変化し続けていて、昭和時代の「当たり前」は通用しなくなっている。私たちは「VUCA」な時代に生きている。
「作れば、売れる」という正解がある時代の優秀なチームは「速く・安く・ミスなく正確につくれるチーム」だった。この時代のリーダーシップはメンバーを管理統制できる力が求められた。
正解がない時代は、小さな実験や挑戦を重ね正解を見つけ出していく。
今の時代のリーダーシップは模索や挑戦を重ね、その実践や失敗から学ぶことができるよう心理的安全性を高め、メンバーをよく見て、声をかけ支援することが求められる。
正解がない時代に求められているリーダーシップは昭和世代のX世代が思い描くものではなく、ミレニアル世代が思い描くそれに近い。
若手リーダーが育たない! その真の課題は、私たちX世代の上司たちのマネジメントスタイルが古く、時代に合っていないためだ。過去の「正解がある時代」の管理統制型のリーダーシップから1日も早く卒業しなければならない。
X世代の私たちができること。
それは、ミレニアル世代とその後ろに続くZ世代を自分たちのスタイルに合わせようとするのではなく、彼らを理解し、彼らが働きやすいステージを用意することではないだろうか?